読んだもの KAGEROU

KAGEROU

KAGEROU

著者・齋藤智裕が、人生を賭してまで伝えたかったメッセージとは何か?
そのすべてがこの一冊に凝縮されている。
(書店の予約票には、ふつうに「水嶋ヒロ」と記入されていました)
というわけで、水嶋ヒロこと齋藤智裕さんのデビュー作。
文章、お話、テーマは期待どおりの出来でした。
あとは、キャラクタとシーンごとの掘り下げが出来れば、もっと面白くなりそう。


文章のテンポや緩急は上手いな、と読み始めてすぐに思った。
基本的に読みやすいし、メッセージも伝わりやすくて、面白かったです。
はてな評価のシステムなくなっちゃったけど、星をつけるなら3個。)
ライトノベルみたいと言う人もいるみたいだけど、ラノベはこんなんじゃないよ。
ダジャレも必然性があると感じたし。
あれは読者を笑わそうとして入れてるのじゃなくて、
主人公が、周りとコミュニケーションを取ろうとする意思を取り戻すアレなんだよ。


自殺しようとした主人公が、夜のデパート屋上で謎の男に呼び止められる…
というあらすじからは、どことなく伊坂幸太郎を感じた。
前半は、若干ファンタジーっぽさもあるけど、わりとリアル指向
後半は、急に作り物になるのだけど、
嘘っぽいというよりは、童話や寓話のような雰囲気も感じた。
だから、もし映像化するなら、後半が難しいなと思う。


以下ちょっとネタバレになるけど、


最後にある絵本の読み聞かせってのは、
この話(KEGAROU自身)のことなんじゃないかなあと思った。
29ページのあれとか、若干メタ指向というか、
本の外側とつながろうとする趣向を感じたのです。
最後のページに誤植を直すシールがあるのは、
誤植だとは思わずに、仕掛けだと思った。重版されたのが出回ったら真相が分かるかな。
後半で雰囲気が変わるのは、「前半で主人公は死んでて、後半はヒロインの書いた本」という裏設定だったりしたら面白いな。